2011年12月13日火曜日

療馬方符

療馬方符 大きさ縦三寸六分横二寸一分,匡郭三寸方形,半葉五行,行空一格十五文字.題箋書名 療馬方符 全
版芯書名欠

 療馬方符 全
 
 療馬方符
   緒言
一国家維新以来博く海外各国の所長を採取す此に於て人才輩出し文学技芸駸々乎と して日に月に開明に就く 詢に千歳一時の秋 な り苟くも文芸に従事する者奮発勉励せざるは莫し独り怪しむ世の馬医者流仍漢流の疎漏杜撰の習に因襲する者多く洋流の精緻玄妙の学を講習す

る者尠きを予此に憾あり乃ち自ら剪劣を省みず彼一千八百六十二年美国蘇篤涅安実氏著する所の療馬書一編を訳し以て江湖の有志に問はんと欲す然れども職務鞅掌にして未だ速に其業を卒ゆる能はす故に先づ治療上日常必要の薬剤篇を鈔訳し印刷して以て同僚に頒つと云ふ
一篇中に載する所の薬名は大概先哲

の訳例を襲用す其未だ訳を経ざる者は姑く原名を写し以て後の君子を俟つ
一秤量は各国普通の者を用ゆ然れども爰に其比例を掲げ以て初学に便す

ガロン  バイント  ポンド  オンス
公八彬 彬十六オンス ポンド十二オンス オンス八オンス
ダクラム三スクルフル 銭同ダクラム スクルフル二十グレイン グレイン一厘六毛六
明治七年三月下旬
周三識

療馬方符目次
更換剤 催眠剤 鎮痛剤 制酸剤 殺虫剤 鎮痙剤
下剤 収斂剤 発泡剤 腐蝕剤 膏薬 浣腸剤 爽心剤 緩和剤 発汗剤 催膿剤

利尿剤 塗擦剤 乳剤    袪痰剤 解熱剤 洗滌剤 麻酔剤 清涼剤 鎮靖剤 
衝動剤 健胃剤 上血剤 強壮剤
目次終

療馬方符
美国 蘇篤涅安実氏著
陸軍二等軍医正 三浦煥校訂
陸軍馬医副 深谷周三鈔訳

更換剤

更換剤の語は其字義穏当ならざれども世間普通の語にして衆人の耳目に慣習して了解し易きを以て因襲する而巳其配剤各個の薬性に就て一々之を諭し更換の効を呈する
は什麼の理を以てするやと問はば各自に此を詳説する事難し但総て更換剤と称するは強壮薬健胃薬等の別ある如く各個一定の疾病に投与し其奏効を冀望す可きものにあ

らす唯一時に病勢を撲滅し其猛威を変革するにあるのみ通例其効を収むる事緩慢なりとす而して肝腎皮膚の如き排泄器には能力を呈する事更に確実なり
第一方皮膚病を治す
吐酒石五オンス,生姜末三オンス,阿芙蓉一オンス,舎利別適宜を以て,十六丸と為し,毎夜一粒を與ふ
第二方清涼剤

バルバドース産蘆薈一オンス西班牙石鹸一オンス半,生姜末半オンス,舎利別適宜を以て六丸と為す毎朝一粒を服す
第三又方
バルバドース産蘆薈一銭半,吐酒石二銭,西班牙石鹸二銭を以て丸とす
第四方尋常更換丸
黒硫化安母尼亜二銭,乃至四銭

硫黄二銭,亜麻仁末乃常水適宜を以て一丸とす
第五方分泌不良を治す
硫黄花六オンス,吐酒石五銭乃至八銭,昇汞十グレイン亜麻仁末適宜を取り熱湯にて混和し製して六丸とし一週間に二回或は三回に分服す,
第六方胃弱を治す
甘汞一刃,蘆薈,葛斯加里児刺末

建質亜那末,生姜末,各一銭石鹸三銭舎利別適宜を以て丸とし,一週間に二回或は毎隔夜に分服す,
催眠剤
催眠剤は知覚を失わはしめ以て疼痛を鎮静する能あるものを云ふ其功殆んど麻酔薬に斎し内服すれば単に麻酔の功を奏す其施用の尤も切実にして且つ安穏なるは吸収せし

むるに在り殊に瞑朦水コロールホルムの如きは方今一般に賞誉せる良薬にして他に類似せる品ありと雖も未だ其用法の如斯く切実なるものを聞かず縦令ひ麻酔沈痛の作用は常に一轍たれとも其功の優劣に至ては同日に論す可らす今亜爾箇児を以て例するに麻酔沈痛に至るまでの際多少精神に不良の感動を起し且つ其功を収むるの作用は続発なるが故

に用量も亦多からざるを得ず是を以て或は危険証を誘発するの畏あり
鎮痛剤
又麻酔剤と名く此諸薬胃に入り速に血液に混じ一異の能力にて神経中枢に効を呈し先ず神経系を興奮し続て乍ち之を抑圧す此続発作用を速にせんと欲せば須らく用量を増すべし都て皆な神経系を沈静し以て下痢を止め或は疝
痛又強直の

如き痙攣を緩快す殊に亜芙蓉の如きは馬の鎮痛薬として最も賞用す其用量須らく多かる可し
  第七方鎮痛飲疝痛を治す
亜麻仁油一彬,的列併其底那油一オンス,乃至亜芙蓉液一オンス,乃至二オンス,混和し,毎一時分服せしめ軽快を得るに至る
第八方鎮痛丸緩性疝痛を治す
亜芙蓉末半銭,乃至二銭,西班牙

石鹸二銭,龍脳二銭,生姜末一銭半,糊丸とし或は糖蜜丸とし,毎一時に分服し,疼痛全く止むに至るべし,常に膀胱に包裏し貯ふべし
第九尋常鎮痛丸
亜芙蓉半銭,乃至一銭,石鹸二銭乃至四銭,生姜一銭,乃至二銭,遏泥子末半オンス,乃至一オンス,葛縷子油半銭,舎利別適宜を以て丸と為

し,或は温麦酒半彬に溶解し,飲剤として與ふ,
第十方加多流下痢を治す鎮痙飲亜刺比亜護謨一オンス,
熱湯一彬に溶解し,薄荷油二十五滴,亜芙蓉液半オンス,
乃至一オンス半を混和し,朝夕分服すべし
第十一方慢性下痢
石灰末,亜剌比亜護謨末,各半オンス,亜芙蓉液半オンス,薄荷水一オンス,混合

し,朝夕に分服す
   制酸剤
此の薬剤は大量に用ひ以て胃酸を中和する性あるものにして或は更換剤の区分に属すとせり即ち亜児加里及亜児加里性の品なり然ども馬に用ゆるの方は未だ之を聞かず
   殺虫剤
虫類を駆逐する薬品にして学者或は希臘語にて「アンヂエルミンシク

ス」と呼び或は羅甸語にて「プルミフェヂス」と称ふ英人鄙俗の称呼にて唯虫薬と云ふ其作用虫類をして衰憊せしめ或は死斃せしめ且つ腸管の裏面を刺激し之を駆除するの性あり
第十二方殺虫丸[カムギー氏嘗て之を賞用せり]
亜魏二銭,甘汞一銭半,七葉樹皮末一銭半,綿馬油三十滴,糖蜜適

宜を以て丸となし,夜間に与え,翌朝左の下剤を投ず
第十三方
亜麻仁油一彬,的列併其底那油二銭,混和し用ゆ
鎮痙剤
鎮痙剤は筋肉の非常に攣縮する疾病即ち稸掣及四肢痙攣等に用いゆ此諸病は其原由異なりと雖ども一般刺衝機の亢盛に由るが故に治方は

姑息に所置せんより寧ろ之を根治するに若かす他の下剤鎮痛剤更換剤興奮剤強壮剤等の如く薬品学へ区分を為す諸薬より選択し採用すべし故に多く方符を掲示するは無用に属するに似たり但其特異効能ある品一二を示し其各箇の本能は別に詳説せず
第十四方治疝飲
的列併其底那油三オンス半,亜芙蓉液

一オンス半,蘆薈一オンス」先づ蘆薈末を温湯に溶解し爾後余の薬品を和し,與ふ
第十五方浣腸法
的列併其底那油六オンス,蘆薈二銭,温湯六彬に溶解し,次に的列併其底那を加え,蜜に撹拌し用ゆ
第十六方鎮痙飲
杜松子酒四オンス,乃至六オンス,蕃椒丁幾二銭,亜芙蓉液三銭,温油一彬

半に混和し飲剤とす,若し惞衝の徴を看れば須らく後服を止むべし
下剤
下剤は其配合薬品各自の本能成分を異にすと雖ども皆是れ腸管の排泄機能を催進する性有る者なり甲は其刺激にて腸の筋衣を収縮し効を奏し乙は饒多の水液を排泄せしめ恰も腸管を洗滌する如き能を

呈し丙は二個の作用を兼併す而して各自其能力を達するに腸管の部分を異にす甲は小腸を衝動し乙は唯小腸に路を取る而巳にして此に感触せず通過し去り大腸に至り能を呈す丙は二個の効能を併せ全腸に効を奏す又下剤に一異性の品あり便ち水銀剤大黄等の如し肝臓に感触し然後本能を呈す是れ一回血中に吸収され再び滲出し其作用を

顕すものなりまた薬液を静脈に注入すれば直ちに能力を腸に波及する事更に遽なり之を施すには須らく腹部静脈の下部に於てすべし下剤の能力皆同じと雖も其奏効の強弱にて自ら峻緩の種別を為す由て緩下剤峻下剤の名あり
第十七方通利丸
蘆薈三銭,乃至八銭,石鹸四銭,生姜一銭,を混和し沸騰せる熱湯

の少量を以て溶解し,次に常丸の度に至るまで,徐々に蒸発せしめ丸に造る,此方能く腹痛を治す,
第十八方温下丸
蘆薈三銭,乃至八銭,炭酸曹達半銭,香竄末一銭,葛縷子油十二滴混和第十七方の如く,次に油を加ふ,
第十九方緩利丸


蘆薈三銭,乃至五銭,大黄末一銭,乃至二銭,生姜末二銭,葛縷子油十五滴,第十七方の如く混和す,
第二十方緩利丸胃弱の馬に用ゆ蘆薈三銭,大黄一銭,乃至二銭,生姜末一銭,葛斯加里児刺末一銭,葛縷子油十五滴,炭酸曹達一銭半,前方の如く混和す,
第二十一方甘汞下剤
蘆薈三銭,乃至六銭,甘汞半銭,乃

至一銭,大黄一銭,乃至二銭,生姜半銭,乃至一銭,石鹸二銭,前方の如く混合す,
第二十二方緩下飲
蘆薈三銭,乃至四銭,白桂一銭,乃至二銭,酒石英一銭,薄荷水八オンスに混和す,
第二十三方
蓖麻子油三オンス,乃至六オンス,バルバドース産蘆薈三銭,乃至五銭,炭

酸曹達二銭,薄荷水八オンス」先つ薄荷水温め蘆薈を溶解し,然る后他品を投す,
第二十四方緩和開達下剤
蓖麻子油四オンス,瀉利塩三オンス,乃至五オンス,燕麦煎汁二ポンドを以て混合す
第二十五方緩和下剤
蓖麻子油四オンス,亜麻仁油四オンスを熱湯一彬に混合す

第二十六方卒倒に用ゆ
蘆薈四銭,乃至六銭,食塩六オンス,芥子末一オンス,常水二彬に混合す
第二十七方緩和清涼下剤軽感胃に用ゆ
瀉利塩六オンス,乃至八オンス,シ勿乙二彬,
第二十八方灌腸
食塩四オンス,乃至八オンス,シ勿乙八オンス,乃至十六オンス,
収斂剤

収斂剤は内外共に用ひ若くは直ちに局部に撒抹し若くは血液に吸収せしむる等なり蓋し其作用は動物の組織を収縮するならん然とも之を精密に試験せんと欲し細に其効理を窮極すれは恐らくは大ひに疑團を生するに至らん或は其理の未た詳かに了解し克はさるものは唯一異妙力有るものとし暫く之を措くへし内服は飲剤とし又外用して

潰瘍及損傷等を治す
第二十九方血尿を治す
阿仙薬末半オンス,明礬半オンス,葛斯加里兒刺皮末若くは糖蜜適宜を以て丸とし,一日両度に服用す
第三十方蜜尿を治す
阿芙蓉細末半銭,生姜二銭,槲皮末一オンス,明礬適宜を採り加蜜兒列茶一彬に,溶解し用ゆ,

第三十一方膿潰に用ゆ
明礬末四オンス,鉛丹膏一オンス,
第三十二方
皓礬四オンス,酸化亜鉛一オンス,研和す
第三十三方収斂飲
護烏刺爾度越幾斯二銭,乃至三銭,常水半彬,
第三十四方
硫酸銅一銭,乃至二銭,常水半彬,
第三十五方蹄踵の腫瘍に用ゆ

酢酸鉛一銭,家猪脂一オンス,練合,
第三十六方収斂膏
消酸銀末半銭,護烏刺爾度越幾斯一銭, 家猪脂一オンス 練合し毎夕少許を取り用ゆ
発泡膏
発泡膏は外皮を刺激し以て真皮と外皮の間に明汁を滲出せしめ由て水胞を発せしむ然とも毛髪上に攤すれは其効を達せす用方二様あり

甲は反対刺激を目的とし外表を刺激し新に一軽証の病患を造り以て内部或は隔離せる部分の患苦を減少す乙は馬胃通例水胞膏と名け唯以て局部の血管より明汁を滲出せしめ其部の患苦を軽快す始め刺痛し続て水液滲漏し来る又其刺激力にて吸収を催進するの能あり
第三十七方緩和発泡膏対衝方とし用ゆ

家猪脂四オンス,溺茶的列併底那一オンス,芫菁末六銭,混和し施用す,
第三十八方強発泡膏,対衝法とし用ゆ,
的列併底那油一オンス,硫酸二銭,謹慎し研和し,次薬を加ふ,家猪脂四オンス,芫菁末一オンス,練磨し用ゆ
第三十九方強発泡膏,対衝法に用ゆ
強発泡膏四オンス,屋里瓦尼謨油半

オンス,龍骨木細末三銭,芫菁末半オンス,混和し用ゆ,
第四十方急製発泡膏,対衝法に用ゆ,
芥子末八オンス,常水にて泥とし,的列併底那油二オンスを加へ,強石鹵砂精一オンスを混合し,急性掀衝等に胸腹及ひ脊椎に塗擦薬とし用ゆ,
第四十一方水胞膏

強水銀膏二オンス,屋里瓦尼謨油二銭,昇汞二銭

三銭,練和して手頭にて擦入す
第四十二方強水胞膏スブレンツ足部息肉レングポンス蹄脚腫瘍等に用ゆ
第二沃度汞一銭,乃至一銭半,家猪脂一オンス,用方先つ脚の毛を剃去し然後之を塗擦し,痛苦を起すに至れは,日々亜兒尼加花剤を以て洗浄すへし,此法亜兒尼

加花丁幾一オンス,常水十二オンス,乃至十五オンス,に混合す
第四十三方,流動水胞膏,
芫菁末一オンス,的列併底那精二オンス,メチーラテツト酒一彬を混合し十四日を歴る後に至て用ゆ
第四十四方
芫菁末一オンス,尋常木醋一彬を混合し十四日を歴る後に用ゆ
腐蝕剤

腐蝕剤は其元質の化学的作用にて動物組織を荒蕪する性有るものなり二種に区分す便ち一は烙触法例之鉄烙の如し一は劇腐蝕剤なり鉱類を以てす苛性加里消酸銀昇汞等の如し
(烙触法)は外科手術篇に詳なり爰に掲示するは尋常化学的作用にて功を収むる劇腐蝕剤のみ
(苛性加里)は施用し難し貯蓄の方難けれはなり且つ馬に用ゆるは極て稀なり
(硝酸銀)は方今賞用するの一品にして常に諸般の顆粒状潰瘍に用ゆ
(硫酸銅)胆礬は硝酸銀に同しく必要品なり然とも較や劣れりとす膝月國の外傷及息肉の如き総て疣贅及顆粒状の腫瘍に擦薬とす

(昇汞)撒末とし疣贅息肉に甚た効あり然とも注意熟考して用ゆへし些少の疾患には屡々之を用ゆれとも大創傷には老練の巧手にあらすんは能く施用し能はすとす其方摩擦後暫時を過き除却して洗滌すへし腐蝕方とし用ゆる方法は尚ほ後篇を参考すへし
(砒石)昇汞の如く刺激激烈ならされとも之を用ゆる甚た稀なり凡て疣贅息肉の尖頭に擦入すれは則ち結痂して速に脱落す
(塩酸安質母尼)又安質母尼酪と云ふ苛性加里に比すれは較や強し単用し或は多少の水を加へ希薄にして用ゆ
(格魯兒亜鉛)有力の腐蝕薬なり七銭を取り常水一彬に和し経久の瘻瘡に注入す

(緩性腐蝕剤)緑青」散末一分に家猪脂三分を和し軟膏とし用ゆ
(赤降汞)右に同し
(枯礬)細末とし撒布す
(白糖)末とし用ゆ
(硝酸銀液)硝酸銀五グレイン乃至十五グレインを蒸留水一オンスに溶す
(胆礬液)胆礬十グレイン乃至十五グレインを蒸留水一オンスに溶す

(格魯兒亜鉛)一グレイン乃至三グレインを常水一オンスに溶す
膏薬
硬膏は多く脛脚熱する者に適す而して野外に放牧する者には須らく綿布にて繃縛し以て自由を得さらしむへし
第五十九方常用硬膏
ビルキュデー松脂四オンス,バルバドース産多兒六オンス,蜜蝋二オンス,鉛

丹四オンス,
右先つ松脂,多兒,蜜蝋を練合して後鉛丹を加え,其稠和を得れは,放冷し貯ふ,若し硬固に過れは家猪脂,及麻油少許を加ふ,蓋し気候の寒暖に関し,硬軟一定せす
第六十方亜兒尼加膏
加奈答拔撒謨二オンス,亜兒尼加葉末半オンス,

右拔撒謨に亜兒尼加葉を混し次に的列併底那精を加へ,徐々に攪拌し稠和するに至れは薄布に展し,全脛に貼す第五十九方の膏薬にて,之を纏束して,繃轉すへし」亜兒尼加は血管の衰弱を治するの效あるか故に有力の強壮外敷薬とす,
灌腸剤
灌腸剤は腸の壅塞及痙攣を軽快す

るの效あり通常単微溫湯或は燕麦煎汁を以てす機械は必す撓屈管にして障扇ある品を採用すへし
痂痛に的列併底那を以て灌腸に施すは痙攣剤の條を看るへし下剤灌腸法は下剤の條を看るへし
第六十一方鎮痛灌腸剤
亜芙蓉二銭を水に溶し,糊粉適宜を溫湯に和し相混し用ゆ

爽心剤
爽心剤は全身を一時に衝動す殊に胃に效あり労働過度にて身体衰弱する者に用ゆ
第六十二方強心丸
葛婁子末六銭,生姜末二銭,丁香油二十滴,糖蜜適宜を以て丸とす
第六十三方
遇泥子末六銭,益智末二銭,括矢

亜末一銭,葛婁子油二十滴,糖蜜適宜を以て丸とす,
第六十四方強心飲
精製溫麦酒二彬,生姜砕細多量を加ふ,
第六十五方強心丸
遇泥子末半オンス,海葱末一銭,没薬末一銭半,百露拔兒撒謨適宜を以て丸とす
第六十六方去痰錠

甘草末半オンス,護謨安母尼亜幾三銭,トリユ拔兒撒謨一銭半,海葱末一銭,亜麻仁末適宜,熱湯にて攪拌し,一塊を造る,
緩和剤
此は腸管腎臓及膀胱の刺衝機過敏を緩和する目的に用ひ兼て尿の分泌を催す
第六十七方緩和飲
亜剌比亜護謨半オンス,常水一彬に

溶解し飲液或は末とし朝夕に分与す
第六十八方
亜麻仁四オンス,常水二彬にて煎熬し,稠厚となるに至るを取り,前方の如く与ふ
第六十九方亜兒答亜飲
有て亜兒的亜二握,常水二彬,第六十八方の如く,煎熬す,用方も亦同し,

発汗剤
此は表皮に一の感能を起し蒸発気を催進し若くは其量を増さしむる者なり
第七十方尋常発汗飲
流動酢酸安母尼亜(民垤列里精)三オンス,乃至四オンス,阿芙蓉液一オンス,を混合し,夜間に与ふ,
第七十一方
流動酢酸安母尼亜二オンス,硝酸亜

的兒二オンス,用法前方の如し,
第七十二方(ハイドポヲント)病名に用ゆ
吐酒石一銭半,龍脳半銭,生姜末二銭,阿芙蓉半銭,葛婁子油十五的,亜麻仁末に熱湯を和し丸とし,一週に二回,或は三回に分服せしむ,
第七十三方(ハイドポヲント)病名激甚ならさる者

金硫黄末二銭,生姜一銭,葛婁子末六銭,遇泥子油二十滴,混和す用方前に同し,
凡て発汗療法を施すには必す毛布を被ひ適宜に運動せしめ而して発汗すれは則ち直ちに之を止め皮膚を刷ひ全く乾くに至るへし
催膿剤
催膿剤は化膿を促し以て金創或は潰瘍を療す

第七十四方催膿軟膏
赤降汞二オンス,溺茶的列併底那一オンス,蜜蝋一オンス,家猪脂四オンス,
先つ的列併底那 蜜蝋家猪脂を混合し,微火に上せ攪拌し,其稠和を得れは火を去り放冷する時に至り赤降汞を和し攪拌す
利尿剤
利尿剤は尿の分泌及排泄を催進する者にして其薬性に従ひ其効能も

亦異なれり甲は胃の交感にて直に腎に効を呈し乙は一旦血中に吸収され再ひ血液より分離し以て尿の分泌を催す其効皆な血液の水分を減する者なり故に身体諸部蜂窩膜より滲出する諸液の吸収を催す
第七十五方衝動利尿丸
松脂末三銭,サルトプルュンネルレー三銭,石鹸三銭,杜松子油一銭,混和す,

第七十六方清涼利尿丸
硝石末半オンス,乃至一オンス,龍脳一銭,杜松子一銭,石鹸三銭,亜麻仁汁適宜を以て丸とす
第七十七方利尿散
硝石末半オンス,乃至六銭,松脂半オンス, 乃至六銭を研和す
第七十八方峻利尿散
硝石六銭,龍脳一銭,乃至半銭,研和す

塗擦剤
塗擦剤は外用して興奮及鎮痙の効あり指頭にて皮膚に擦入し内部の疼痛及炎勢を誘導す
第七十九方芥子塗薬
芥子末六オンス,流動諳母尼亜一オンス半,的列底那油一オンス半,常水適宜を以て泥とし用ゆ
第八十衝動塗擦薬
龍脳半オンス, 的列底那油一オンス半,

酒精一オンス半,混和す
第八十一方蹄根腫等に施す解凝膏
水銀膏二オンス,龍脳半オンス,迷迭香二銭,的列底那油一オンス,混和す
第八十二方強解凝膏
水銀膏二オンス,バイ油一オンス,屋里瓦尼謨油半オンス,芫菁末半オンス,混和す
第八十三方極強解凝膏
第二沃汞半銭,乃至一銭,亜兒尼

加葉末一銭,流動石鹸二オンス,混和す
乳剤
凡そ油質物に含蓄する球塊を亜刺比亜護謨或は蛋黄の如き粘滑物にを研合し稠和するを乳剤と云ふ而して其効気管及ひ気管支の粘膜刺衝機亢進するを緩和す
第八十四方単乳剤
亜麻仁油二オンス,蜂蜜三オンス,水一彬,

先つ炭酸加里一銭を取り,蜂蜜及加里を水に溶解し,徐々に亜麻仁油を加ふれは,乳様液となる,用方朝夕に
に分服す
第八十五方複方乳剤
龍脳一銭,阿芙蓉末半銭,遇泥子油三十滴
右三品を白糖に和し,研磨し,徐々に第八十四方単乳剤七オンス,を加ふ

去痰剤
気管支粘膜の分泌を催進する効あり故に欣衝を軽快し且つ咳漱を緩解す
第八十六方欣衝なき軽易の咳漱にて尋常去痰剤を与ふ,便ち亜刺比亜護謨半オンス,海葱末一銭,石鹸二銭,蜂蜜適宜を以て丸とする者なり
第八十七方軽く咳漱の胃病に因

する者を治す
阿魏三銭,瓦児抜奴謨一銭,炭酸諳母尼亜半銭,生姜一銭半,蜂蜜適宜を以て丸とす
第八十八方強去痰丸
吐酒石半銭,甘汞十五グレイン実芰答利斯半銭,海葱末半銭,亜麻仁汁或は常水適宜を以て丸とす,須らく注意し用ゆへし
解熱剤

解熱剤は熱勢に起由する動脈神経の刺衝機更新するを一般に緩和す故に一は神経動脈を緩和し一は皮膚腎臓の分泌を催進し効を奏す
第八十九方解熱丸
硝石四銭,龍脳一銭半,甘汞阿芙蓉各一刃,亜麻仁末常水適宜を以て丸とす
第九十方
吐酒石一銭半,乃至二銭,達刺俔

篤護謨末二銭,亜麻仁末を以て丸とし前方の如くす
第九十一方
硝石三銭,龍脳二銭,前方の如く丸とす
第九十二方清涼錠
硝石六銭,乃至一オンス,白糖末にて塊を造る
第九十三方清涼飲
硝石一オンス甘硝石精二オンス,実芰答

利斯丁幾二銭,沕乙一彬
洗滌剤
局部に貼し以て其部を清涼にし血管を強壮にす
第九十四方外部欣衝,清涼洗滌剤
護烏刺爾度越幾斯一オンス,醋二オンス,酒精或はジン三オンス,常水一彬半,混合綿布に浸し患部に貼し後繃
帯を施す
第九十五方四肢,或は食道及肩背

欣衝等に用ゆ
磠砂一オンス,醋四オンス,酒精にオンス,亜児尼加丁幾
二銭,常水半彬を以て混合す
第九十六方,悪性潰瘍滌剤
硫酸銅一オンス,硝酸半オンス,常水八オンス,乃至十二オンス,混合す
第九十七方眼滌剤
硫酸亜鉛二十グレイン,乃至二十五グレイン,常水六オンス混合す

第九十八方眼部強滌剤
硝酸銀五グレイン,乃至八グレイン蒸留水一オンス,混合,毛筆にて貼す
麻酔剤
麻酔剤は鎮痛薬に算入し馬医の薬剤には之れを区別せす鎮痛剤を参看すへし
清涼剤
獣類は人身に比すれは温度較や降れり故に通例冷気冷水氷塊其他蒸

発を促す性の浄剤を用ゆ
鎮靖剤
此薬剤は精神の官能を侵さすして血管神経の機能を減する品なり其尤も著しきはなり但蓄積毒の名あり縦令ひ少量なれとも久しく連用すれは其効一頓に顕れ全量を服するに齊し須らく注意すへし其他双鸞菊も亦心臓の鼓動を減却して危険症を発せす其効将に実芰答利斯に斎しと云
衝動剤
衝動剤は神経及血管系を衝動す他の薬剤の局部を衝動する者と漸や異なれり例之は下剤の腸の裏面を衝動すと雖とも全躯は却て之を鎮静す(バルエキセルレンシ)抜群の意と称せる衝動薬は脳髄及心臓の機能を衝動催進する者なり
第九十九方

右麦酒二彬炭酸諳母尼亜半銭,乃至二銭生姜丁幾四銭混和飲液とす
其他は強心剤を参看すへし
健胃剤
健胃剤は胃中に病疴を生し消化を妨ぐるを治す
第百方健胃丸
建質亜那末半オンス,生姜末一銭半,炭酸曹達一銭,糖蜜適宜を以て

丸とす
第百一方
葛斯加里児刺末一オンス,没薬一銭,西班牙石鹸一銭,単舎利別或は糖蜜適宜を以て丸とす
第百二方
格綸撲末半オンス,乃至一オンス,括失亜末一銭,大黄末二銭,混和す第百一方に同し
止血剤

止血薬とは内外を論せす出血を止むる者にして大抵機械にて之を処置す外部の出血は常に強腐蝕薬或は鉄烙を賞用す然とも亦注射薬ならされは能はさる所あり鼻刃血の如し須らく次方を用ゆへし
第百三方
マチコ葉胡椒の類半オンス熱湯一彬を以て煎し,放冷して,濾過し,鼻中に射注す

内部止血薬は収斂剤を参看すへし
強壮剤
強壮薬は全躯をして強壮ならしめ長く健康を保たしむる者なり興奮剤の如きは一時の強壮薬と考ふへし斯に掲るは虚性熱病後の如き衰弱に賞用する者なり
第百四方強壮丸
硫酸鉄半オンス,加蜜児列越幾斯一オンス,混和し丸とす
第百五方
砒石十オンス,生姜一銭,遏泥子末一銭,達刺侃篤護謨末二銭,単舎利別適宜を以て丸とす,之し甚た有力の強壮剤なり


療馬方符大尾
学而不思則罔