御大典紀念全国馬匹博覧会秘話「いわしや騒動」
帝都復興の景気に湧く昭和四年のこと、日本獸醫師會はつひに「日本獸醫師會々報」を刊行せり。
時の農林省畜産局長戸田保忠は七行の祝辞を寄せ・・・これはどうでも良い事で、肝心なのはこ
の会報の裏表紙なのである。
昭和五年版「覚醒的大カタログ」予約販売の広告である。本来なら無料で配るところを製版費用
が巨額になったため金二円を一円に割り引いて販売すると言うものである。来年のすごい出版物
を半額で予約販売とくれば詐欺商法の三拍子が完全に揃っている。この広告に騙されて全国から
どれほどの申し込みがあったことやら・・・昭和五年のカタログは六年になっても発行されず、騙さ
れたと知った被害者は続々と抗議の声を上げ始めた。その時困ったのが別のいわし屋で、一番大
手で信用のあるいわし屋暁雲堂は獣医関係雑誌に広告を打って『いわし屋○○獣医機械店は当
店とは全く関係がありませんし、人違いで、いわし屋○○獣医機械店はこれがために監督官庁
の・・・』と、名乗り出た。
広く業界の認識を仰ぐ
「いわしや暁雲堂」と「いわしや○○獣医機械店」とは、全然別個の存在にて営業上、血縁上何等
の関係なき事は、夙に業界に於いて認識される厳たる事実ながら、未だに混同され最近の「いわ
しや○○獣医器械店」の不都合乱脈につき、弊店に叱声を寄せられる向も多々有之、弊店の非常
に困惑遺憾と致すところにて、何卒混同なき様お伝へ御示達の程お願ひします。
一、・・・・・昭和六年一月カタログ発行と称して予約金一円也を集めながら・・・(獣疫調査所交友
会報第十四号所載広告参照)・・・満二ケ年を経過せる今日、未だ発行せず業界に対して詐称欺
瞞の不信、不実をなせる店。
二・・・・・再三、再四の欺瞞虚偽のため農林当局並に業界より指弾されし店。
三・・・・・店員の給料不払が数ヶ月に及ぶは元より、店員の貯金、掛金をも使ひ込みて弁償せず、
而かも店員を解職せる店。
四、・・・・・工場、製作所、同業問屋への支払が極度に渋滞して、制作、供給のボイコットに遭ふが
如きコンマ以下の店。
是等が「いわしや○○器械店」の真正なる現況であります。斯くの如き「いわしや」斯くの如き没
落に瀕せる「いわしや」と、弊店「いわしや暁雲堂」を混同され不都合乱脈の叱声を弊店に寄せら
れる事は多大なる迷惑を感ずる次第にて、斯の如き「いわしや」と、いやしくも店主が市並に区の
公共団体及び町会の役員たる名誉職を奉じ豪快にして堅実、内地は元より、朝鮮、台湾、樺太、南
洋の植民地、満州国、北支那に至るまで、所謂日満経済ブロックの隅々にまで営業網を有する溌
溂、隆々たる弊店「いわしや暁雲堂」と近藤される事は甚しき困惑にて何卒各位に於かれても自衛
上よりそれぞれの店舗の内容状態、及店主の人格品位をよく検討され、認識されん事切望して止
みません。
営業種目 獣医機械
医化学機械
細菌学機械
病理学機械
衛生学機械
養鶏用機械 東京市本郷区元町一丁目
いわしや 暁雲堂 電話小石川(85)四三五三番
五六〇二番
振替口座東京一九七八八番
電略「イ」又ハ「イワ」
これが昭和七年の「応用獣医学雑誌」の裏表紙。驚いたことに怪しい商法はまだ続けられている。
昭和六年一月完成の豪華カタログ貴方だけの特別価格!半額!・・・・・そして昭和八年になると、こ
の業界から姿を消してしまう。南方に逃げたのやら、満州ゴロになったのやら・・・はたまた昔の従
業員に消されたのやら
斯くて御大典紀年なんとやらの『受胎増進器』は中央獣医会の独占販売となったのである。
牛に膽あり.鹿馬これを欠く.足らぬ故にこれを馬鹿と呼ぶ.牛膽に玉のやうなるものあり.名付けて牛黄.神農本草経に驚癇寒熱,熱盛狂痙を治し,邪を除き鬼を逐うと.また,左経記に河原者の獲りたる牛の珠の事あり.牛黄を獲るは秘伝にして他言無用の秘事なり.以て秘すべし.秘すべし.ヲンロケンジンバラキリクソワカ.
2018年4月26日木曜日
2018年4月24日火曜日
佐藤清明
「日本獣医師会々報」昭和四年の創刊号にツギのような広告がある。
これだけの人物でありながら非常に情報が少ない。「日本獣医学人名事典」では掲載未完者一覧の中にさえこの名前がない。偶々手許の天金「日本馬政史」や明治二十五年三月の「中央獣医会雑誌第四輯付録日本家畜売買法」を見て驚いた!高名な博士先生を凌ぐ超博学学士である。それもそのはず、この人物は駒場農学校最後の卒業生で同期が時重初熊に廣澤辯二、廣澤の回顧によれば同郷同窓の佐藤は学生の頃から先輩も一目置く程の博学博識。「日本馬政史」編纂の折には編纂主任で廣澤が輔佐、名だたる先輩諸博士はヒラの委員である。なお、この広告の次の頁は唐仁原氏が涎を流すような広告があるが、本題とは関係ないのでここには掲載しない。
これだけの人物でありながら非常に情報が少ない。「日本獣医学人名事典」では掲載未完者一覧の中にさえこの名前がない。偶々手許の天金「日本馬政史」や明治二十五年三月の「中央獣医会雑誌第四輯付録日本家畜売買法」を見て驚いた!高名な博士先生を凌ぐ超博学学士である。それもそのはず、この人物は駒場農学校最後の卒業生で同期が時重初熊に廣澤辯二、廣澤の回顧によれば同郷同窓の佐藤は学生の頃から先輩も一目置く程の博学博識。「日本馬政史」編纂の折には編纂主任で廣澤が輔佐、名だたる先輩諸博士はヒラの委員である。なお、この広告の次の頁は唐仁原氏が涎を流すような広告があるが、本題とは関係ないのでここには掲載しない。
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